なぜ貴金属はお金の材料に用いられてきたのか
先日、筆者が2年前に執筆した論文「公益的債権としての主権貨幣」がインターネット上で公開されました。
研究者情報サイト「リサーチマップ」における筆者のページでもダウンロード可能なので、ご興味のある方は、是非どちらかで入手してください(リサーチマップでは、それ以外の筆者の論稿・講演資料・出演動画などもご覧いただけます)。
経済学術誌『季刊経済理論』に掲載された本論文は、貨幣(お金)の本質に関する2つの貨幣理論を取り上げて、教科書などでも一般的な「商品貨幣論(貨幣の本質は、素材価値のある商品である)」が現実と矛盾する誤った理論であることを指摘しています。
そして、ドイツ歴史学派を源流としてMMT(現代貨幣理論)にも受け継がれている「債権貨幣論(貨幣の本質は、発行者に対する債権証書である)」こそが現実とも整合し、かつ主権者としての国家の存在意義をも説明してくれる理論であることを、経済学の枠組みを超えて、歴史学・宗教学・言語学・生物学といった他分野の知見も採り入れることで論じています。
なお、MMTの貨幣理論は「信用貨幣論」と述べられることが多いのですが、本論文でも述べているように、これは誤訳です。
こう書くと、「金や銀との交換が保証されない不換紙幣が流通している現代はともかく、貴金属を材料とするコインが主にお金として用いられてきた古代から近代のある時期までは、商品貨幣論が妥当するのではないか」と思う読者もおられるかもしれません。
実際、そのように説明している本も時折見かけます。
しかし、上記論文にも書いたことですが、昔の貴金属コインがお金として通用したのも、その素材価値が理由ではありません。
その理由もまた、債権貨幣論によって説明できるのです。