インフラ再公営化はなぜ合理的なのか
8月11日の日本経済新聞朝刊に「英、民営化政策が転機に 水道劣化/鉄道は遅延や運休」という記事が掲載されました。
新自由主義の「本家」ともいうべきマーガレット・サッチャー政権(1979~1990)のもとで世界に先駆けて推進された、インフラ事業の民営化・自由化が、投資不足によって行き詰まっているというのです。
例えば、もともとは公営だった水道会社をオーストラリアの投資銀行などに売却したところ、株主への配当が優先されてインフラ投資に資金が十分回らなった結果として汚水処理能力が低下し、川や海に汚水が垂れ流されて環境被害が生じているそうです。
このほかにも、国鉄を民営化したところ列車の脱線事故や運休・遅延が問題になったり、民営化した元国営の鉄鋼会社が中国企業に買収されて国内の高炉が閉鎖の危機に陥ったりするなど、重要産業の存続が危うい状況となっているとのこと。
昨年行われた世論調査でも、8割近くがインフラの再国有化を支持するという結果となったようです。
折しも昨年、サッチャー氏が所属していた保守党よりも大きな政府を志向する労働党が政権に復帰しました。
そこで、民営化企業に対する規制や経営介入を強化するとともに、鉄道については経営の受け皿となる公的機関を設立し、順次再国有化を進めているようです。
しかし、新自由主義者が信奉する主流派経済学の観点からも、インフラの民営化によってこうした弊害が生じるのは、ある意味必然的なのです。
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- インフラ民営化による投資不足は、自由市場メカニズムの必然的結果である
- 新自由主義を正当化する主流派経済学の欺瞞
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