従来の財政学はなぜ非現実的なのか――改めて今、MMTが注目されつつある背景
課税最低限や年金制度の見直しなど、国家の財政政策に関する議論が盛り上がる中で、従来の経済学や財政学とは世界観が全く異なる、MMT(現代貨幣理論)への注目度が改めて高まる気配があります。
島倉原
2025.03.31
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昨年10月の衆議院選挙では、与党が過半数割れとなる一方で、国民民主党・れいわ新選組・参政党といった反・緊縮財政的な政策を掲げる政党が躍進しました。
その後の国会では、課税最低限(いわゆる「103万円の壁」)の引き上げや、年金制度の見直しといった国家財政に大きくかかわるテーマが議論となり、今年の夏には参議院選挙も予定される中で、反・緊縮財政論の有力な論拠となっている革新的な経済理論である「現代貨幣理論」、いわゆるMMTへの注目度が着実に高まっている感があります。
例えば、拙著『MMT<現代貨幣理論>とは何か:日本を救う反緊縮理論』は、日本経済の現状分析も交えてMMTを概説した本ですが、MMTの世界的なブームが生じた2019年に刊行され、今年ではや6年が経過します。にもかかわらず最近、アマゾンで在庫切れとなる事態がしばしば(そして本稿を執筆している2025年3月31日時点でも)生じており、少部数ずつではありますが、かれこれ14刷まで増刷されています。