「日本の財政はギリシャより良くない」はなぜ間違いなのか

「日本の財政はギリシャより良くないので、減税はできない」という石破首相の主張は、明らかに誤っています。ユーロ危機でギリシャに起こったような国債の暴落や財政破たんは、日本には起こり得ません。ただし、それは「ギリシャは自国通貨ではないのに対し、日本は自国通貨だから」という単純な理由ではありません。
島倉 原 2025.06.02
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石破首相も出席した5月19日の参院予算委員会で、消費税の減税を求める質問が、野党側から相次ぎました。

それに対して石破首相は「金利がある社会・世界の恐ろしさというものは、よく認識をする必要がある」と指摘した上で、以下のように述べたということです。

「金利ある世界は現出しており、我が国の財政状況は間違いなく極めてよろしくない、ギリシャよりもよろしくないという状況だ。税収は増えているが、社会保障の費用も増えているわけで、そういうことを全て総合的に勘案していかなければならない。そこにおいて減税をするのだ、財源は国債で賄うという考え方には私どもとしては賛同しかねる」

しかし、この発言には、2つの大きな誤りがあります。

それは、5月12日のニュースレター「赤字国債は将来世代へのツケ回し」はなぜ誤りなのか」で述べた内容の、応用問題と言ってもよいでしょう。

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  • 金利水準と財政状況は全く関係ない
  • 中央銀行の行動ルールの違いが、ギリシャ国債の暴落をもたらした

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