「手取り」ではなく「所得」を増やせ——政府は減税よりも財政支出拡大を

政府の緊縮財政に対する反発が広がる中で、国民民主党が大きく支持を拡大しています。しかし、「手取りを増やす」をスローガンとして掲げる国民民主党の政策論に対し、筆者はかなりの違和感があります。緊縮財政を脱却する上で重要なのは、減税よりも、むしろ財政支出の拡大です。
島倉 原 2025.05.01
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所得が伸び悩む一方で物価だけが上昇して生活が苦しくなる中で、所得伸び悩みの原因が政府の長年にわたる緊縮財政であるという事実が、徐々にではありますが、日本国民にも浸透してきています。

その結果、緊縮政策を続けてきた与党である自民・公明両党に対する支持率が低下する一方で、反緊縮的な政策を掲げる野党各党への支持が拡大しています。

その中でも存在感を高め、メディア露出も大きいのが国民民主党です。

筆者自身、足かけ15年にわたって反・緊縮財政の論陣を張ってきたわけですから、昨今のように反緊縮の意識が国民の間に広がっていること自体は、よいことだと思います。

また、拙著『MMT講義ノート』や『MMTとは何か』でも述べているように、MMT派の経済学者が言うところの「悪い税」であるにもかかわらず、緊縮財政下で引き上げられてきた消費税や社会保険料については軽減すべきと考えており、この点では国民民主党の主張とも合致します。

しかし、「手取りを増やす」をスローガンとして掲げ、減税をはじめとしてもっぱら負担軽減策を提唱する国民民主党の全体的な主張には、かなりの違和感があります。

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  • 緊縮財政最大の問題は、財政支出抑制による政府機能の低下
  • 小さな政府・社会の弱体化を助長させかねない国民民主党の政策論

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