なぜ、間違った経済理論が主流派になってしまうのか

市場経済への過信、非現実的な貨幣理論など、根本的な欠陥を抱えているにもかかわらず、なぜ新古典派経済学が経済学界の主流派であり続けているのか――社会的な力関係と思想的な伝統という、2つの要因が考えられます。
島倉原 2025.07.24
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筆者は、昨年より、東京工科大学のデザイン学部・医療保健学部生を対象とした基礎科目として、経済学の講義を行っています。

同講義では、経済学には世界観の全く異なる2つの系統が存在すること、世界観が非現実的なのは実は主流派(およびマルクス派)の方であることを説明した上で、主流派に取って代わるべき有力な理論として、MMT(現代貨幣理論)についても一通り教えています。

したがって、非経済学部生向けの基礎科目としては結構ディープな内容になっていると思いますが、一般的な経済学の教科書に沿うだけでは非現実的な知識や考え方を教え込むだけになってしまうため、そのようにしている次第です(もちろん、主流派経済学を全否定しているわけではなく、需要曲線・供給曲線を使ったミクロ経済学の基本などは、きっちりと教えています)。

先週(17日)の講義では「日本経済をどう立て直すべきか」と題し、拙著『MMT講義ノート』第6章で述べた8つの提言を下敷きとしつつ、長期停滞を続ける日本経済再建の基本方針案を、それまで学んだ知識の応用例として解説しました。

参議院議員選挙の直前ということもあって学生の関心が高かったのか、普段よりも講義後の質問も多く、その中に「政府はなぜ、こんなに間違った政策を続けてしまうのでしょうか?」というものがありました。

対して筆者は、「非現実的な世界観の経済理論が主流派になってしまっているから」と答えたのですが、「解答としては50点だったな」と後で反省した次第です。

本来は、「なぜ、非現実的な世界観を持つ経済理論(新古典派経済学)が、主流派の地位を占め続けているのか」というより根本的な問題にまで踏み込んで、答えるべきでした。

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続きは、2629文字あります。
  • 主流派経済学は、強者の論理である
  • 主流派経済学の思想的基盤としての、西欧キリスト教社会の伝統

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